11/24(土)に台湾で国民投票が行われます

政府広報の表紙

11月24日(土)に、台湾で国民投票が行われます。統一地方選挙と同時に実施されるのですが、「同性婚」「LGBT教育」「脱原発」「オリンピックへの「台湾」名での参加」など10件もの議案が国民投票で同時に問われます。

<みんなで決めよう「原発」国民投票>は、この国民投票に大変注目しています。台湾が民主主義国家になったのは1987年に戒厳令が解除され複数政党制に移行したときですから、その歴史はまだ31年に過ぎません。しかし、台湾では日本よりも二大政党制が定着しており、また国民投票によりダイレクトに国民の声を反映する仕組みが整っているのです。

いわば台湾は、後発ではあるものの、民主主義の「超成長国」と言えるのではないかと思います。そんな台湾の国民投票の模様を伝えるために、投票日前に当会の二人のスタッフが現地に入り、皆さんにレポートする予定です。

まずは、今回の国民投票についての概要をお伝えします。

■2017年の公民投票法の改正

2003年に公民投票法(*1)が成立してから、台湾で過去に国民投票が行われたのは3回、計6件の事案についてです。今回一度に10件もの議題について投票が行われることになったのは、2017年に公民投票法が改正され、国民投票の提起要件や成立要件が大幅に緩和されたからです。

(*1)台湾では「国民投票」という言葉は使われず、「公民投票」と言われ、自治体レベルでの住民投票もこの概念に含まれます。

改正されたポイントは多岐に渡りますが、中でも影響が大きかったのは成立要件についてでしょう。以前の法律では、投票率が50%に達しなければ投票の結果が有効にならない、という成立要件がありました。一般的に「最低投票率」と呼ばれるものです。その結果、過去6件の国民投票は、ボイコット運動が発生して投票率が50%に届かなかったため、いずれも「不成立」となりました。それが今回、「賛成票数が反対票数を上回り、かつ有権者の25%を超えた場合」に「成立」となるように法律が改正されました。これは「絶対得票率」と呼ばれるもので、投票率に関わらず賛成の側が25%の票を取れば「成立」となることから、ボイコット運動が発生しづらいという特徴があります。

また、必要な署名数の緩和も大きな変更でした。旧公民投票法では国民投票を提起するために集めなければならない署名数は「有権者の5%」でした。これが2017年の改正で「有権者の1.5%」に変わったのです。台湾の人口は現在2,358万人でそのうち有権者は1,900万人ほどと言われています。旧基準だと必要署名数は95万筆(1,900 X 0.05)ですが、新しい基準では28.5万筆(1,900 X 0.015)です。署名を集めるグループにとって、この違いは大きいでしょう。

この成立要件の変更と署名数の緩和を受けて、市民グループや政党が一気に国民投票を提起したわけです。

議題が10もあるとその詳細を全て理解するのは容易ではありませんが、以下に簡単に紹介したいと思います。過去に6件の国民投票が既に行われているので、今回は7から始まっています。

■国民党が提起した3議案

〇第7案 「毎年平均少なくとも1%引き下げ」という方法で火力発電所の発電量を徐々に引き下げる方法に同意するか否か。

〇第8案 「あらゆる火力発電所あるいは発電機(深澳火力発電所の建設含む)の新たな建設、拡充工事を停止する」というエネルギー政策の策定に同意するか否か。

〇第9案 日本の福島県をはじめとする東日本大震災の放射能汚染地域、つまり福島県及びその周辺4県(茨城県、栃木県、群馬県、千葉県)からの農産品や食品の輸入禁止を続けることに同意するか否か。

7、8、9は、国民党が提起したものです。台湾は二大政党制で、現在与党の民進党と野党の国民党とが激しくしのぎを削っています。今回、二大政党の野党側が3つも国民投票を仕掛けてきたわけです。中国と同じように台湾でもPM 2.5などによる大気汚染が大きな問題となっており、7と8はその大気汚染を減らすことを大きな目的として掲げています。9は、蔡英文・民進党政権が輸入禁止を解くことを考慮していることから、それに反対するものとして提起されました。国民党のWebサイトを見ると、3つまとめて「護健康」(健康を守る)という観点から賛成票を投じることを呼び掛けています。

■同性婚・LGBT教育に反対する3議案

〇第10案 民法が規定する婚姻要件が一男一女の結合に限定されるべきであることに同意するか否か。

〇第11案 義務教育の段階(中学及び小学校)で、教育部及び各レベルの学校が児童・生徒に対して「性別平等教育法(=ジェンダー平等教育法)施行細則が定めるLGBT教育を実施すべきではないことに同意するか否か。

〇第12案 民法の婚姻に関する規定以外の方法で、同性カップルが永続的共同生活を営む権利を保障することに同意するか否か。

2017年5月、台湾の司法最高機関である大法官が「同性同士の婚姻を認めていない民法は違憲」と判断し、2年以内に民法を改正するか、新しい法律を作ることを政治に対して求めました。

10、11、12は、この判決に対抗するように「下一代幸福聯盟」(日本語に逐語訳すると「次世代幸福同盟」)というキリスト教系の保守団体が提起したものです。民法では同性婚を認めず(10)、代わりにパートナーシップ法を成立させ(12)、併せてLGBT教育を抑制しよう(11)という3つの提案を仕掛けてきました。

■同性婚・LGBT教育を求める2議案

〇第14案 民法の婚姻に関する章が同性カップルによる婚姻関係を保障することに同意するか否か。

〇第15案「性別平等教育法」が義務教育の各段階でジェンダーの平等に関する教育を実施するよう明記し、且つその内容が感情教育、性教育、LGBT教育などに関する課程を盛り込むべきだとすることに同意するか否か。

14と15は、保守派が提起する10、11、12の動きに危機感を覚えた人たちが、それに対抗するものとして提起したものです。14は同性婚を民法上で婚姻と認めることの是非(10の裏返し)で、15がLGBT教育を行うことの是非(11の裏返し)になります。

「Aに反対」と「Aに賛成」という二つの議案が国民投票で同時に問われるのは、世界的にも極めて珍しいのではないかと思います。普通は「同性婚に賛成ですか?反対ですか?」というように一つにまとめられることでしょう。

■オリンピックなどに「台湾」の名称で

〇第13案 台湾(Taiwan)の名称で、あらゆる国際競技大会や2020年東京五輪に出場参加することに同意するか否か。

13は、東京オリンピックなどのスポーツの国際大会に従来の「Chinese Taipei」という名義ではなく「Taiwan」名義で参加することへの賛否を問うものです。メキシコオリンピックに台湾代表として参加し、80mハードルで銅メダルを獲得した紀政(きせい)さんが提起者になっています。当時紀政さんは「Taiwan」名義での参加を経験していて、今回も同じようにすべきだというのです。

国際機関や国際的なイベントで「台湾」という名称を使うことを求める運動は「正名運動」と呼ばれていて、台湾では根強い運動です。なお、現在の公民投票法では、独立の是非を議題とすることは認められていません。

■「2025年脱原発」を定めた法律条文の削除

〇第16案 「電業法(日本の「電気事業法」に相当)」の第95条第1項「台湾にある原子力発電所は2025年までにすべての運転を停止しなければならない」の条文を削除することに同意するか否か。

2025年に脱原発するという現在の国家の政策に反対して、「以核養綠 」というグループが提起したものです。再生可能エネルギーの割合を現在の5%から20%に増やすという政府の計画は非現実的である一方、グリーンエナジーであり環境への不可も少ない原子力発電を活用すべきだと訴えています。団体の名称に「緑」という単語を入れていることからも、この点を強く推していることがうかがえます。

*当記事の各議案の日本語訳は、TAIWAN TODAYの下記の記事を参考にさせていただきました。
過去最多10項目の公民投票、11/24の統一地方選挙と同時実施へ(発信日: 2018/10/25)

(鹿野)

2018年11月19日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:活動予定

トラックバック&コメント

この投稿のトラックバックURL:

コメントをどうぞ