ブルガリア「原発」国民投票・現地レポート(第5回) by しばけん

前回レポートしたデモと集会をオーガナイズしたのは、ボリスラフ・サンドフさん。後日時間を取って頂いて、インタビューをさせて頂いた。声をかけた時は存じ上げてなかったのだが、ブルガリアGreens(日本でいう緑の党)の共同議長の方だった。投票の4日前で、テレビやラジオの出演、首相との会談、イベントや討論会の打ち合わせなどを抱えており大変忙しそうであった中で実現した。

2つの携帯とマックブックを同時に使いこなす 多忙を極めるボリスラフさん

2つの携帯とマックブックを同時に使いこなす
多忙を極めるボリスラフさん

彼曰く、もう何度も前回のようなデモ(原発のことではなく環境破壊を止めるデモ)をやっていて、始めは800人程だったが 最終的には5000人くらいになって街の中央の橋を人で閉鎖したりして、首相の決定にも影響を与えている。また別のデモでは10000人を超えるものもあった。

「フクシマの事故は皆さん知っていますか?」と聞くと、「フクシマのことは一斉に報道されたが、今はもうフクシマの影響は忘れてしまっている人も多い。そして、もうすぐ二年が経とうとしているが、今のフクシマの現状を知る由もない。チェルノブイリやスリーマイルのように風化していってしまう。それに対して、推進派は問題点を棚にあげて、原発は安い、安全、生き残る道だ。と言い続けている。」

次に国民投票についてどう思うか聞いてみると「もちろんやるべき」と答えた。そこで僕が「情報がきちんと行き渡ってないから、やらない方がいいんじゃないですか?」とかまをかけると「今、私たちが決めなければならない。政治家に決めさせてはいけない。決定した後、政治家はいなくなってしまうけれど、原子力のゴミは後世にも残るし、ブルガリア人は住み続けるし、子どもの達の未来もある。だから今、私たちが決めるべきだ」と力強く答えた。

しかし実際の投票率はかなり低くなりそうだ。23日に発表された統計によると、27%~37%。国民投票が法的拘束力を持つのは、2009年に行われた総選挙の投票率である60%を超える必要があるので、それには程遠い数字だ。

ではどうしてこんなにも低い投票率になりそうなのだろうか。その一番の理由は投票の結果が、政府の決定に影響を与えないからだという。「新しい原発でブルガリアの原子力発電を発展させますか?」という設問。与党のGERBはNoが多くても既にある「新しくない」コズロデュイ原発を延長して使う計画を進めようとしている。そしてYesも同様で、さらに「新しい」原子炉7号機8号機を作るという計画もある。つまり、どっちにしてもGERBは原発を使い続けることになる。そして、野党のBSPが国民投票で復活させようとした「ベレネ原発」が焦点になっていない。さらに今まで通りに原発が使われるので「原発の是非」も焦点になりづらくなってしまっている。

もともと消極的な人が投票にいかないという状況に加えて、このような状態で行われる国民投票に「金の無駄」「一部の政党のための国民投票」「設問を変えたのがいけない」などという理由で政治や原発に積極的な人までも投票をボイコットする。クネヴァ元大統領候補の率いる政党「市民のブルガリア」も国民投票はボイコットするように呼びかけている。それらが投票率27%~37%という調査結果に表れている。

結果の扱われ方、設問、政党の利益などの問題点は確かにあるかもしれないが、それでもなお、「新規原発に賛成か反対か」国民一人ひとりが主権者の意思を直接示すことができるのが国民投票である。結果が出た後にどう政治家が判断するか。それを見極めて、次の選挙にいかせば良いではないか。もともと国民投票に消極的な人はまだしも、積極的な人までが投票をボイコットしては、政治家は動かせない。投票しないということは、政治家への無言の服従にしかならない。しかしブルガリアはこの世論調査のあと、投票率が上がるための何の決定打もないまま、投票日を迎える。


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プロフィール
大芝健太郎 しばけん
26歳 フリーライター
「原発」国民投票賛同人
「原発」国民投票 調査団のメンバーとして
リトアニア国民投票も現地取材

月刊「社会運動」連載中
雑誌「NOU LIFE STYLE」他

Blog: http://shibaken612.blogspot.com
Twitter: https://twitter.com/shibaken612


2013年1月28日 | コメント/トラックバック(0) |

カテゴリー:海外情報

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