リレーメッセージ「第15回 孫崎享(元外交官、評論家)」

当会の賛同人で、外交問題を始めとした政治課題に鋭い視点を提供し続けている孫崎 享さんが、メッセージを寄せてくださいました。


孫崎享


孫崎享(元外交官、評論家)
1966年、外務省入省。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使をへて、2009年まで防衛大学校教授。著書に『戦後史の正体』(創元社)、『日本の「情報と外交」』(PHP新書)など。Twitterアカウント( @magosaki_ukeru )のフォロワーは6万人を超える。

 今日、原発の最大の問題は福島原発事故の究明が全く行われていない段階にもかかわらず、政府自民党が原発の再稼働にむけて着々と準備を行っていることにある。

 5月26日共同通信は次のとおり報じた。
「安倍政権が成長戦略に盛り込むエネルギー政策の原案が25日判明した。原子力規制委員会が安全と認めた原発は『再稼働を進める』と明記し、立地自治体などの理解を得るため『政府一丸となって最大限取り組む』との姿勢を強調した。早期再稼働を求める経済界や立地自治体などに配慮したとみられる。」

 何故、こんなことが許されるのか。

 平成25年4月24日付村田光平元スイス大使は経団連会長宛書簡にて次のように記述している。
「4月19日、東電に照会したところ、1号機、2号機及び3号機の最高線量は、1号機は800ミリシーベルト、2号機は880ミリシーベルト、3号機は1510シーベルトです。専門家によれば10ミリシーベルトのところに1時間いると致死量に達するとのことですので、決死隊も作業ができないのは2号機のみならず、1号機も3号機も同様であることが判明いたしました。
最悪の事態が発生すれば打つ手のないこのような福島第一の現状は国家的危機です。東電によれば福島第一からは毎時1000万ベクレルの放射線量の放出が今なお続いております」

 崩壊した福島第一原発一号機の現場を、東電以外の人が現場検証しているか。事故が津波だけに起因するか、地震にも起因するか、それを検証し対応しているか。していない。 学者など誰も足を踏み入れていない。なぜか。現場視察があまりにも危険すぎる。この現場を実地検証した東電以外の唯一の人物が川内博史前民主党議員である。そして、地震で故障した可能性があるとの情報を手に入れたが、日本の主要報道機関はどこも報道していない。

 2005年2月23日、石橋克彦神戸大学教授は、衆議院予算委員会公聴会で「迫り来る大地震活動期は未曾有の国難である」という論を展開した。
「アメリカでは地震現象というのは、地震というのは原子力発電所にとって一番恐ろしい外的要因であるというふうに考えられております。地震の場合は複数の要因の故障といって、いろんなところが振動でやられるわけですから、それらが複合して、多重防護システムが働かなくなり、最悪の場合にはいわゆるシビアアクシデント、過酷事故という炉心溶融とか核暴走とかいうことにつながりかねない訳であります。」

 こうした重大な論点に全く答えることなく、「早期再稼働を求める経済界や立地自治体などに配慮」し原発再稼働をめざすのが、今日の政府と自民党の立場である。

 日本は今、極めて深刻な選択の中にある。それは今日明日だけではなく、何十年先の世代にも影響を与える選択である。何よりも事実を把握する必要がある。国民にとり最も重要なことは、原発の深刻さを知り、再稼働をとめる人々を国会に送ることである。

 

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