スコットランド独立住民投票 現地レポート第3回

paper日本では、にわかにスコットランドブームが巻き起こっていると聞いた。住民投票のことに加え、NHKの朝の連続テレビ小説「マッサン」で、スコットランドに渡って、ウイスキー作りを学んできた竹鶴政孝さんとスコットランド人の奥さんのリタさんのニッカウヰスキー創業に至る話が始まったのだとか。一方スコットランドでは、日本の御嶽山の噴火と香港の通常選挙を求めるデモが連日報道されている。

さて、スコットランドに到着してからこつこつと取り続けたアンケートがついに100人を越えたので、考察とともにここに公表したい。

*スコットランド「独立」住民投票アンケート
期間2014年9月15日~9月23日サンプル数 104人
(エディンバラ64人 グラスゴウ40人)
若者を中心に対面調査。10代から70代の男女
協力:翻訳 金子誠人 アンケート補助 Elin Johansson

Q1. 今回の「独立」について住民投票に賛成か反対ですか?(独立に賛成か反対かではありません)

賛成 87人(83.7%)
□「独立」のように大切なことは住民投票で決めるべき。83人(賛成と答えた人のうち95%)
□ 政府の決定と主権者・国民の多数意思がねじれていると考えるから。28人(32%)
□ その他7人(8%)
・人びとの問題は人びとで決めるべき。
・全てのスコットランド人も投票できるようにするべき(国外に住んでいる人も含めて)…など

反対 17人(16.3%)
□これはUK全体のことなのでUKのreferendum(国民投票/住民投票)で決めるべき。9人(反対と答えた人のうち53%)
□民衆は正しい選択をすることができないので議会に任せるべき。3人(18%)
□正しい情報がきちんと行き渡ってから実施すべき。8人(47%)
□その他 1人(6%)

考察:実に83.7%の人が、住民投票に賛成している。この数値は今まで調査をした、リトアニア、ブルガリア、スイスの中で最も受け入れられているReferendum(国民投票/住民投票)だと言える。「UKの住民投票にかけるべき」という反対理由や「正しい情報がきちんと行き渡ってから実施すべき」という理由も今回の住民投票には反対の立場だが、住民投票自体には反対していない。もっと状況を整えることが重要だという指摘だと考えられる。

Q2. 16歳以上が投票権を持つということについてどう思いますか?
賛成 73人(70.2%)
□将来にわたって影響が大きい若い世代も投票をさせるべき。54人(74%)
□十分に判断力を持っているので投票させるべき。38人(52%)
□その他9人(12%)
・結婚すること、軍隊に入ることなど仕事を選ぶことができるのだから投票権も持つべき。
・若い時から政治に興味を持つ人が増えるから。
・年齢は問題ではない。きちんと複合的で複雑な政治的な情報を与えることが大切。若者の意見を無視していい理由はない。

反対 31人 (29.8%)
□投票するには若すぎる。28人(90%)
□その他3人(10%)
・親や、友達の影響が大きすぎる。

考察:今回、16歳17歳が初めて投票をする機会を得た。(通常選挙の投票権は18歳以上から)そのおかげだろうか、出会った16歳17歳の学生が皆、独立について考え、学校でも議論をしているという。更に日本の中学生にあたる10代前半の世代にも関心が広がっていて、学校の授業でも独立について頻繁に取り上げられているそうだ。投票年齢を引き下げるということは、それだけ関心を持つ人を増やし、世代間議論を深めるきっかけになると考えられる。

Q3. いつから「独立」というテーマに興味を持ち始めましたか?
□2014年~ 投票日が近づいてきてから26人(25%)
□2013年~ 盛り上がってきてから26人(25%)
□2012年~ 住民投票をすることになってから20人(20%)
□2011年~ 前回のスコットランド選挙辺りから5人(5%)
□2000年~ スコットランド議会ができてから10人(10%)
□1990年~ 3人(3%)
□それ以前 11人(11%)
□現在も興味がない 2人(2%)

考察:住民投票をきっかけに今まであまり興味のなかった人も、70%を越える人が「独立」に興味を持ち始めたと答えている。若い人を中心に話を聞いているということを加味しなければならないが、それでもこの結果は興味深い。例えば、日本でも「原発」をテーマにした国民投票を行う場合、今は関心がない人でも決定権を与えられることによって、もしくはメディアなどで取り上げられたり、友達や家族などで話されるようになってくると、自然に関心を持ち始めるということが十分考えられる。

Q4.誰と「独立」に関しての話をしますか?
□学校の友達68人(65%)□地元の友達61人(59%)□親58人(56%)□親戚48人(46%)□兄弟41人(39%)□bar や公園などで知らない人など37人(36%)□インターネット上24人(23%)□子ども13人(13%)

考察:学校の友達や地元の友達、または親と話をする人が半数を超えている。また、知らない人とも36%の人が議論をしていたというは意外にも多かったが、実際にカフェや、道ばたで知らない人同士が議論をしているのを目撃した。インターネット上で話をするという人が23%と、あまり多くないことには少し驚いたが、ツイッターでは #indyref のハッシュタグでかなり活発に情報発信がされていたし、フェイスブックでも同様に多くのグループが作られ独立に関する情報が飛び交っていた。

midoriスコットランドの独立は住民投票によって否決されたが、独立運動を牽引してきた国民党は、住民投票終了後、急激に党員数を増やし、25000人からついにスコットランド人口の1%を大きく越える69000人に達した。そして他にも独立を訴えていた社会党も約1200人から2100人に。また緑の党もスコットランドで1700人だった党員が6000人を越えるまで急成長している。

住民投票から一週間後、エディンバラの緑の党が月に一度の地域ミーティングを開いた。たくさんの来場者が予想されたため会場を変更したのだが、その予想をも上回る200人程の老若男女が集まった。始めに議員が挨拶した後、10人程のグループになってどうして今日のミーティングに参加したのか、緑の党に期待するものは何か、などについて話し合った。そのミーティングで司会をしていた緑の党のセルビーさんに話を聞いた。

「住民投票を通して、緑の党が環境だけでなく、社会福祉や市民参加による民主主義などを進めていこうとしている政党だという魅力が伝わりました。これからも私たちは緑の党のポリシーについて考え続けて、発信することが大切だと考えます。そして、緑の党の目的は独立ではありません。住民投票での独立という道は途絶えてしまいましたが、より良いスコットランドに向かうためにはいろんな道があるのです。そのためには今回の住民投票で反対に投票した人も一緒に巻き込んでいかなければなりません」

今回の独立をかけた住民投票でスコットランドは大きく変わった。「今までより政治について学び、メディアを鵜呑みにせず、議論をするようになった」と話を聞かせてもらう人皆が口を揃えて言う。これからはキャメロン首相の掲げた権限移譲の提言を注視し、次の総選挙に活かすという。このように彼らは議会制民主主義を否定している訳ではないし、直接民主主義も当然のものであると考えている。スコットランドでは国民が政治に参加できるのは選挙だけではないのだ。

日本で「原発の再稼働などについて、国民投票にかけよう」と提案すると、賛成派、反対派の両派から「負けるかもしれないから嫌だ」という声が少なからずあがってくる。しかし国民投票は「自分たちの主張を通すため」に行うものではない。世論が大きく二分されている「原発」など命や倫理、将来に大きな影響を及ぼす重要な問題に関して、国民が直接自分たちの責任で投票を通じて方向性を示すのが国民投票である。そして結果ももちろん大事だが、投票に至るまでに市民一人ひとりが情報を取捨選択し、議論を重ねること、投票によって責任の所在がはっきりするということ、そして負けたら全て終わりではないことはスコットランドの住民投票が物語っている。

それと同時に日本では、若者の低投票率が叫ばれて久しい。もっと早いうちから政治に興味を持つきっかけとして「投票権」を与え、政治について考えて、議論をして投票に行く習慣を作らなければならない。日本でも16歳から仕事を選ぶことができるし、結婚をすることもできる。つまり彼らは既に国を構成する重要な世代で、将来を決定する権利があるのだ。ただでさえ、高齢化が進み、高齢者向けの政策が通りやすい傾向がある。その問題を解決するためには「憲法改正の国民投票についてのみ18歳以上にする」というだけでなく選挙年齢の引き下げが必要なのだと考える。

日本でも海江田万里衆議院議員がスコットランドの住民投票を受けて「今こそ、日本のエネルギー政策、とりわけ原発政策について国民投票が検討される時期ではないかと考えます」と自身のブログに掲載したこともあり、これから国民投票に向けた議論が本格化していくであろう。埼玉県でも「原発」に関する住民投票を求める署名運動が今月中旬から始まる。その時には勝ち負けがどうなるかは、もちろん大切なのだが、それ以上に大事なのが、それまでにどれだけ多くの人を巻き込むことができるのか、結果如何に関わらず両派がより良い未来のために、どのような「原発政策」を作っていけるかである。今こそスコットランドのように「国民投票」や「住民投票」などの直接民主主義を通して「原発問題」を政治家のものから、国民みんなのものにしていくべきなのではないだろうか。

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筆者プロフィール
大芝健太郎(27)旅するジャーナリスト
スイス、リトアニア、ブルガリアなど、ドイツを中心にヨーロッパの住民投票・国民投票を現地取材。「原発」国民投票賛同人。
Blog: http://shibaken612.blogspot.com


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