大阪市廃止・特別区設置の是非を問う住民投票実施の総評

私たち市民グループ「みんなで決めよう『原発』国民投票」関西有志は、大阪市において5月17日に行われた特別区設置住民投票の実施に先立ち、2月13日[1]に提言と問題点をあげ、実施に至るまでの改善を求める声明を出しました。また、実施決定後の4月1日[2]には、市会議員、報道各社、大阪市民に対して住民投票への関わり方について提言しました。
これらの声明と提言に照らし、今回の住民投票の全経過から浮かび上がった問題点と評価点とを挙げます。また、体験することで見えてきた、今後の住民投票への課題を提言します。

[1] http://kokumintohyo.com/archives/9587 (2015.2.13)
[2] http://kokumintohyo.com/archives/9671(2015.4.1)

 

1.不十分かつ不公正だった市民への情報提供

住民投票は課題についての住民の理解と議論が欠かせません。しかし法定協議会は賛成・反対両派の対立に終始。議論が不十分なまま協定書は可決されました。それまで、市民への説明もほとんど行われていませんでした。私たちも提言していた公開討論会は実施されず、終盤に数回のテレビ討論があっただけでした。市民を交えた賛否両派による公開討論会が各区で開催されるべきでした。
住民説明会は39回開催され、3万2千人の市民が参加しましたが、これは有権者のわずか1.4%にすぎません。説明会に参加できない有権者への配慮の面で、大都市における住民投票として課題を残しました。
全戸配布されたパンフレットには巻頭に橋下市長の賛成意見のみ掲載され、逆に住民投票公報は市議会構成に比例したため賛成1ページ・反対2ページとなり、いずれも賛否両論のバランスを欠いた偏った情報提供になっていました。
また説明会では橋下市長の演説に大半の時間を割き質疑応答が不十分など、公平性に問題がありました。
マスコミ各社の報道も不十分でした。「大阪市を解体し5つの特別区を設置する」ことが設問であるにもかかわらず、中立・正当とはいえない「大阪都構想」という言葉を使い続けました。何を問う住民投票か、賛成多数ならどうなるのか、市民への正しい情報提供が行われたとは言えません。

2.信任投票への意図的なすり替え

今回の住民投票では、政策への賛否を市民が議論する以前に、橋下市長への支持/不支持に論点がすりかわってしまった側面がありました。政党や首長が提案する場合、住民投票が信任投票の色合いを帯びる傾向はあります。しかし今回の状況は度を越したものであり、住民投票の意義を損なうものでした。
橋下市長が「否決されたら政治家を辞める」と発言したこと、反対派は橋下市長を退陣させる絶好の機会ととらえて7年間の橋下府政市政を糾弾したこと、これらにより(橋下市長に)「期待しているから賛成」「嫌いだから反対」の分断が生まれ、その対立が理性的な議論の妨げになることがありました。

3.活発だった賛成・反対運動、市民の動き

このような中でも、市民の間では活発で自由な運動が巻き起こりました。選挙と異なり市民がビラやポスターの制作・配布を自由に行い、多様な動きにつながりました。党派を超えて共同した反対活動の動き、ネット上での討論サイトでの党派を超えた議論など、支持政党の枠を超えて大阪市の課題を話しあう姿がみられました。
賛否両派の政策議論は市民の多くが政策そのものについて知り考えるきっかけになりましたが、過熱した反論合戦が市民の議論への参加を遠ざけた面もあったと考えます。下記4で記したチラシ配布を行った実感として、市民は無関心ではなく、公平で建設的な議論を望んでいるようでした。賛否両派を交えた公開討論会は、市民の政治参加という点でも開催する意義はあったと考えます。
投票率66.83%は最近10年で最も高く、また無効票率も0.4%であり、重要な政策課題についてのみを問う住民投票は、特定の政党や議員を支持しない人にも参加しやすいものとなっていると思われます。積極的な政治参加を生み出す一つの方法として、住民投票制度が果たす役割は大きいといえます。

4.「原発」国民投票・関西で作成・配布した「賛否対論」チラシ

私たちは今回の住民投票の問題点である「公正な情報提供の不足」を補完し、より多くの市民に投票を促す目的で、賛否両論の対照やこの住民投票の意義を記載した独自のチラシを作成し、5月8日から投票日の17日まで、市内各所で合計約1,200枚を配布しました。
(みんなで決めよう「原発」国民投票サイトのチラシ配布紹介記事)
この活動には多方面から高い評価を受けました。一方で公正な情報が定義できない中での両論併記には、誤った情報を拡散させる危険性も指摘されました。こうした反応は、より公正で正確な情報が有権者に周知されるには、どのような対応が考えられるのか、今後の議論と検討を重ねていく必要性を私たちに提示するものでありました。


より公正かつ公平な住民投票実施に向けた提言

私たちは、今後の住民投票への課題を下記のとおり提言します。

1.実施期間90日へ、大都市法の改正を求めます。

現行の大都市地域における特別区の設置に関する法律では、実施決定から60日以内と定められていますが 、情報を集め、議論し、判断するには短すぎます。賛成・反対両派の運動員からも「あと1か月あれば」という言葉が出ていました。実施決定から90日とすれば、市民レベルでの公開討論会も計画でき、十分に議論が尽くされるものと考えます。

2.ともに暮らす外国籍の方々の投票資格を考えましょう。

今回の住民投票では、大阪市に暮らす永住外国人および定住外国人に投票資格はなく、投票資格に関する議論も行われませんでした。地域に暮らす全ての住民にとって重要な課題を問う住民投票の性質から、投票資格の範囲を拡げることも今後の課題として、検討する必要があると、私たちは考えます。

3.市民の自由な街頭活動の保障を求めます。

選挙と異なり活動に制限がなかったため、賛成・反対を問わず、市民一人ひとりが自由にチラシ配布など街頭活動をすることができました。これは規制の多い選挙では見られない大きな利点だったと考えます。今後の住民投票においても、チラシの作成・配布などを含む街頭活動については制限や規制を加えず、原則自由であることが望ましいでしょう。

4.CMは賛否両論に平等な放送枠を設けるべき。

一方、テレビCMについては、無制限に放送枠を買うことができたため資金のある側が有利となり、今後の住民投票・国民投票において大きな課題となりました。テレビCMについては、長さや回数、放送可能な期間を規制し、賛成・反対両派が平等に放送枠を持てるよう配慮することを求めます。

5.投票用紙の設問は公正で正確な文言を。

今回の住民投票の投票用紙には「大阪市における特別区の設置についての投票」と記載されており、大阪市を廃止するという事実が書かれていませんでした。賛否に影響する設問および選択肢については、公正かつ正確な理解が担保できるよう、制度面からも整える必要があると考えます。






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