安倍政権の独裁を許し、国家権力を重視した方向に世論が傾くのは政府の御用聞きとなってしまったマスコミの責任です。影響力のあるテレビや新聞が政権に対する監視機能を普通に発揮すれば民意を無視した独裁政権は存在するわけがありません。しかしながら総務省の管轄下にあるテレビ局は放送法を盾にとった政府の脅しに屈し、おうかがいをたてながら報道を続けているような状況です。
また読売新聞、産経新聞などは明らかに政治的意図を持って世論の誘導を目論んでいます。
そんな中、佐賀県民にもっとも影響力のあるマスコミのひとつである佐賀新聞がオスプレイの配備に関してどのような意見を持っているかということが政治の方向性を握る重要な鍵ですが、佐賀新聞の論説(2016年6月7日付 古賀史生氏)が再びりっぱです。このような立派な論説を堂々と出してくれているであればまだまだ佐賀は大丈夫だと考えます。
=====以下佐賀新聞Liveより転載======
オスプレイ配備問題 2016年6月7日
新型輸送機オスプレイの佐賀空港への配備計画を巡り、防衛省が自衛隊施設の配置案を佐賀県側に示した。オスプレイ格納庫や弾薬庫などの配置図で、若宮健嗣防衛副大臣は「九州の防災拠点に」などと、新たな位置づけまで持ち出して計画を受け入れるよう山口祥義知事に求めた。
だが、この配置図ひとつでは、オスプレイ配備計画に絡む県民の懸念は何一つ解消されない。示された計画規模は33ヘクタールで、環境アセスメントの対象となる35ヘクタールをぎりぎり下回った。時間と手間を嫌い、何とかして環境アセスを逃れようとする狙いが透ける。
環境対策を口にしていたが、県有明海漁協などが心配する環境への影響を重視しているとは思えない。自衛隊との共用を否定した「公害防止協定」も軽んじているのではないか。秀島敏行佐賀市長が「協定締結から20年がたち時効になったというのは許されない」と指摘したが、まったく同感だ。
そもそも、オスプレイ配備計画は自衛隊機だけではなく、将来的な米軍利用まで含んでいた。交渉が難航したため、防衛省は米海兵隊の利用は取り下げたが、かといって将来の可能性が消えたわけではない。中谷元・防衛相は「全国の他の空港と横並びで考慮」としており、佐賀空港を除外すると約束したわけではないからだ。
まずは県民の抵抗感が少ない自衛隊を、いずれは米軍も-。そうした思惑があると考えるのが自然だろう。
先日起きた沖縄の女性殺害事件で、沖縄県の翁長雄志知事は「米軍基地があるがゆえの事件」と指摘した。米軍基地を抱える全国の自治体でつくる「渉外知事会」も沖縄と足並みをそろえて、日米地位協定の改定を要請している。
将来、佐賀空港が米軍を受け入れるような事態になれば、基地ゆえの事件が起こりはしないか。受け入れに当たっては、米軍まで見据えた判断が求められると指摘しておきたい。
佐賀空港の利用は3年連続で過去最多を更新している。格安航空会社(LCC)が加わり、上海、ソウルへも路線は広がる。名称も「九州佐賀国際空港」と改めた。
オスプレイ配備により、経済的なメリットを期待する向きもあるが、民間空港として軌道に乗り始めた今、軍事利用はむしろ障害になりはしないだろうか。
利用が集中する福岡空港は今年3月、国交省から「混雑空港」に指定された。処理できる容量を超えたという判断で、離着陸回数に制限がかかった。これは、隣接する佐賀空港にとっては大きなチャンスだろう。
2020年の東京五輪に向けて、外国人観光客も増えている。福岡空港を補完する役割を担っていけば、民間空港としての発展性はさらに高まるのではないか。
今回、このタイミングで副大臣が佐賀を訪れたのは「6月県議会でめどを」という働きかけに違いない。来年度予算に向けた概算要求の締め切りが迫るからだ。
だが、私たちにとってはふるさとの姿を変えるかもしれない重い選択になる。将来世代のために、そして歴史の検証に耐えられる判断をするには、時間も情報も足りなすぎる。防衛省には情報を小出しにせず、誠実に対応するよう求めたい。(古賀史生)
(6月7日付 佐賀新聞論説)