後藤健二さんが出演した最後のラジオ番組。
その中で後藤さんはイスラム国の本質について語ってくれている。

『フセインにしてもカダフィにしてもイスラム教を利用して権力を握ったにすぎない。そうではなくイスラム国はイスラム教の国家をつくろうとしている』のだと。

政教分離という言葉がある。近代国家を作るためには政治と宗教を分離する必要があるという考え方だ。そもそもキリスト教やイスラム教、ユダヤ教といった一神教においては創造の神がこの世界を創ったわけであるからそれ以外の一切のものは神の下にしか存在しない。政治は当然、宗教の中の一部にしか過ぎないわけで宗教家からすれば政治と宗教を分離するなど同次元で扱うこと自体が間違っているのだ。政教分離した時点で宗教は世俗に取り込まれ、本来の宗教は死んでしまうといっていい。

キリスト教はローマ帝国という世俗に取り込まれたとき本来のキリスト教でなくなっている。日本でも奈良の大仏を創った時期はまだ本気で仏教で国を治めようと考えていた。結局織田信長が石山本願寺を焼き討ちし、強引に政教分離を行なった。また戦前の日本においては天皇こそは神であり、最終的に政教分離が行われたのは戦後だ。

そう考えればイスラム国が目指しているのは本当の意味での宗教の復活だ。それはマホメット登場以降イスラム教が地中海沿岸を統一した最盛期のイスラム帝国を復活させることでもある。

この崇高な理念にもともと信心深い多くのイスラム教徒が追随する。人も集まれば資金も集まる。西側諸国にとって今回のイスラム国との抗争が簡単に終結しない理由がそこにある。しかしその一方ですでに国家を形成しているイスラム教徒の国は同じイスラム教の国でありながら敵対する側に回る。すでに政教分離を終えて国家を形成しているイスラム諸国にとってはイスラム国が既得権益を脅かす困った存在でもあるのだ。