■「ラムサール」登録気もむ
佐賀空港(佐賀市)に新型輸送機オスプレイを配備する防衛省要請を受け、同市東与賀町の干潟を「ラムサール条約」に登録する計画への影響を懸念する声が、地元住民らから上がっている。同干潟は「シギ・チドリの飛来数日本一」。市は申請面積を大幅に縮少することで、登録申請に必要な県や地元漁協などの同意を得るための「環境」を整えたばかり。配備計画が同意の妨げにならないかと気をもむ。一方、干潟の保全に取り組む地元住民も「仮に配備されれば、騒音で野鳥が飛来しなくなるのでは」と危ぐする。
■環境省「配備とは別問題」
「渡り鳥たちに選ばれた素晴らしい東与賀干潟。オスプレイに選ばれるような干潟ではない。皆さん自信を持って」。27日に同町で開かれた「東よか干潟シンポジウム」。ひと足先にラムサール条約に登録されている同じ有明海の荒尾干潟(熊本県荒尾市)関係者が主張。地元の懸念は、会場からの拍手で示された。
国際的に重要な湿地帯として保全する「ラムサール条約」。東与賀町の干潟登録をめぐっては2005年、バードストライク(鳥衝突)などを懸念した県が申請を断念した。佐賀市では昨年8月、本格準備を開始。登録には「国の鳥獣保護区特別保護地区」の指定に、県や漁協など関係団体が同意する必要がある。このため鳥衝突やノリ漁に配慮し、申請面積を環境省案の約1250ヘクタールから約250ヘクタールに縮小した。
こうして関係団体の内諾を得るための協議を進めていた矢先、今回のオスプレイ配備計画が持ち上がった。驚いた市は22日の武田良太防衛副大臣からの協力要請の翌日、ラムサール条約申請を取りまとめる環境省と対応を相談。スケジュール通り作業を進めていくことを確認し、ウルグアイで来年6月に予定される締約国会議での登録を目指すことにしている。
民間と自衛隊が共同使用する空港が隣接しながらラムサール条約の登録湿地となった例には、宍道湖・中海(鳥取・島根県)と米子空港がある。これを踏まえ同省は「登録条件は基本的に湿地帯の環境。(オスプレイ)配備計画とは別問題と考えている」とし、佐賀県の判断を注視する。
県は古川康知事が会見で条約登録に対し「調べてみる」と答えており、担当課も「漁協を中心とした地元判断を踏まえ、結論を出したい」と話す。県有明海漁協の幹部は、同意の可否判断は結論に達していないと前置きした上で、「ただ配備計画が影響することはないと思う」との見解を示した。
一方、オスプレイが配備された場合、環境そのものへの影響を懸念する声もある。佐賀空港と登録申請予定地は、最短で約2キロと近接。それだけに、干潟を次世代に残そうと活動してきた東与賀まちづくり協議会(西久保充会長)には、住民から心配する電話などが寄せられた。「騒音の影響が気がかり。渡り鳥はもちろん、ムツゴロウなど干潟の生物がみられなくなるのでは。地域活性化の核である干潟を、宝の海を守ってほしい」と訴える。
佐賀新聞 2014年07月28日