■見えない理由困惑広がる 半永久的駐留 懸念も

 22日午後、福岡市内のホテルで開かれた九州沖縄防衛議員連盟の総会。オスプレイの佐賀空港配備について、古川康佐賀県知事らへの要請を終えたばかりの武田良太防衛副大臣があいさつに立った。「今日は佐賀県に行ってきました」。各県から集まった県議、市町村議を前に、佐賀空港の地理的優位性などを強調し、配備方針を説明した。

 なぜ佐賀空港か-。古川知事との面談後、会見で問われた武田副大臣は佐世保市との距離の近さを挙げた。自衛隊と米軍基地があり、日米の軍事拠点の一つとなっている佐世保まで約60キロ。北部九州の陸、海、空自衛隊の拠点基地との統合運用など地政学的な利点を最大の理由としている。

 「総合的にベストと判断した」。同じ言葉を繰り返し、最後まで、民間空港を軍事化する明確な理由を語ることはなかった。

■本土に拡散

 こうした地理的理由なら、自衛隊が持つ大村飛行場(長崎県)などでも支障はないとの見方も多い。安全保障論が専門の植村秀樹流通経済大教授は「自衛隊と共用し、米軍も使うとなれば、佐賀空港でなければならない理由はない」と疑問視する。民間空港に軍事基地を併設する意図は別にあると指摘し、「政府は中国の脅威を念頭に西部方面に部隊をシフトしている。新たな基地獲得に民間空港を使う前例をつくれば、基地の本土拡散につながる」と懸念を示す。

 一方、元陸上自衛隊幹部で2002年から目達原駐屯地(神埼郡吉野ケ里町)指令を務めた福山隆氏は、佐賀空港配備を合理的と評価する。既存の自衛隊基地を利用せず、あえて整備のハードルが高い民間空港を選んででも「基地は分散させ、多ければ多いほどいいのが基本だ」と話す。

 オスプレイの配備に加え、目達原駐屯地のヘリ部隊移転を盛り込んだことも「九州重視の配置が進むなか、物資の補給とヘリ部隊という二つの機能を担うには当時から狭いと感じていた。機能を十分発揮する意味で適切な判断」とみる。

■あまりに唐突

 政府や防衛省から、明確な理由が示されないことに加え、「あまりにも唐突に出てきた提案」(県幹部)への疑念も広がる。

 「沖縄の負担軽減のため、できることはすべてやる。それが政権の基本姿勢だ」。佐賀県に正式要請した翌23日、安倍晋三首相は、基地負担を本土で分け合う必要性を強調した。政府は、その見返りとして負担に見合う「交付金」を新設する考えも示している。

 ある自民党のベテラン県議は「自衛隊だけならまだしも、負担軽減を理由に米軍まで駐留する。11月の沖縄知事選対策というのは見え見えだが、いきなり話を振られた側はたまったもんじゃない」と、不快感をあらわにする。

 8月の政府予算概算要求までに理解を得たいとした副大臣の発言にも反発が広がった。別の自民県議がけん制する。「できるわけがない。沖縄知事選の結果次第では、暫定的というはしごを外され、米軍が半永久的に駐留しかねない。そもそも、なんで佐賀なのかをもっと理解できるように説明してもらわないと。すべてはそれからだ」