【佐賀で池田哲平】「地理的、環境的、運用面的要素を総合的に判断した結果、佐賀空港がベスト」。武田良太防衛副大臣は22日、佐賀県を訪れ、陸上自衛隊のオスプレイ配備先に佐賀空港を選定した経緯を古川康知事に説明した。小野寺五典防衛相も「沖縄の負担軽減」を掲げ、米軍普天間飛行場所属機の暫定使用について言及した。降って湧いた佐賀空港の軍民共用化に、佐賀県民の間には戸惑いが広がっている。現場を訪れ、住民の揺れる思いを聞いた。
佐賀県の空の玄関口となる佐賀空港。有明海に面した空港周辺の湾は筑後川と早津江川から流れた養分によって育つノリの名産地として知られる。最盛期には約10キロにわたって網が並び、黒のカーテンができる。漁業者らは、ノリ養殖用の支柱を立て始める9月ごろから翌年の春前にかけ、ほぼ毎日小型の船舶で漁場を見回るという。
◆半農半漁
佐賀空港は1998年、干拓によって広げられた土地に開港した。地権者のほとんどは漁業者で、ノリの時期以外は大豆や麦、米を育てる半農半漁。滑走路の中心から約2キロ以内に民家はない。周辺の畑は23日、大豆の種をまいたばかりで茶色い土肌が広がる。
「周りが海だから大丈夫だという話は通用しない」。有明海で3代にわたってノリの養殖をしている川崎賢朗さん(53)は自衛隊の駐留、普天間所属機の暫定的な使用に反対だ。
有明海の漁業者は年々、減少傾向にある。川崎さんが所属する漁協の組合員数は約250世帯だが、漁業をなりわいとする世帯は150世帯ほど。一方、休漁期に営農する畑は主に漁協が管理している。川崎さんは「お金が欲しいとして自衛隊や米軍の施設建設に賛成し、土地を防衛省に売ってもいいと言う人が出るかもしれない」と懸念している。
かつて沖縄を訪れ、米軍基地の現状を目の当たりにした川崎さん。「沖縄の負担軽減が必要という話も分かるが…」と前置きしながらも「海に出て、万が一何か落ちてきたら逃げられない。特に米軍機の事件、事故の怖さが大きい」と話した。
◆「国は説明不足」
空港建設前、佐賀県と有明海周辺にあった8漁協(当時)は公害防止協定書と覚書を結んでいる。その付属書で漁協代表者と県との主な会議録が1冊になっている。漁協は「覚書に自衛隊との共用はしない旨明記されたい」と進言。県側も「自衛隊と共用するような考えはもっていない」と回答している。
当時、川副漁協の青年部幹部で、空港の軍民共用化に反対していた佐賀市議の川崎直幸さん(64)は訴える。
「国は説明不足だ。筋を通して住民の声を大事にしてほしい」