「沖縄の負担軽減」を口実に、安倍政権がまたロクでもない計画を進めようとしている。突然、佐賀空港へのオスプレイ配備が浮上した一件だ。

 武田防衛副大臣は22日、佐賀県を訪れて、陸上自衛隊のオスプレイ17機と、米軍普天間飛行場の辺野古移設が実現するまでの間、米海兵隊のオスプレイも佐賀空港に配備することを要請した。

 よく考えれば、これはおかしな話だ。自民党はこれまで、沖縄の「地政学的位置」を理由に普天間基地の県外移設を否定してきた。さらに、「海兵隊はチームで行動することによって効果的な戦力を発揮するため、各構成部隊を切り離せば抑止力が損なわれる」と説明してきたはずだ。だから、オスプレイの配備も普天間の移設先も、沖縄でなければダメなのだと言い張ってきた。

 沖縄タイムス元記者の屋良朝博氏が言う。

「沖縄に海兵隊を置く抑止力なんて、この程度のいい加減な話なのです。こんな簡単に基地機能を移転できるなら、県外移設を訴えた民主党の鳩山政権に対する批判は何だったのか。結局、11月の沖縄県知事選で自民党が勝つために、沖縄の負担軽減をアピールする弥縫策でしかない。目先の利益のために安易な方針転換をしたということです。しかし、佐賀空港にオスプレイの駐機場を整備し、一方で辺野古にも新基地を造って5年後に戻すなんて、合理性がまったくない。巨額の税金を使った選挙対策のようなものです」

■民主党政権時代に米軍が要請

 佐賀空港への移転は、民主党政権時代にも検討されたことがある。屋良氏の著書「砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ」によると、もともとは米側の希望だった。米軍再編の日米交渉に関わった米外交官が、普天間の移設先として佐賀空港が「ナイス・ロケーション」と、日本政府に提起したというのだ。その米外交官は「佐賀空港は発着便が少ない。周囲に住宅もない。沖縄の普天間飛行場を移転するのにもってこいだ」と話したという。

「米軍の海兵隊は、まず長崎の佐世保港から揚陸艦が出て、沖縄で海兵隊を乗せて目的地に向かう。長崎に近い佐賀空港でオスプレイが離発着できた方が便利なのです。九州の方が朝鮮半島に近いという地政学的なメリットもある。日本政府が率先して佐賀への移転を進めてくれるのだから、米軍は大歓迎でしょう。佐賀空港への移転は『暫定的』と言うけれど、いったんオスプレイの拠点用に整備すれば、なし崩しでずっと使用し続ける可能性が高い。おそらく、沖縄も佐賀も米軍が使うことになる。防衛費をどんどん使って、軍備を拡大したい安倍政権の思惑も透けて見えます」(ジャーナリスト・横田一氏)

 菅官房長官は22日の会見で「沖縄の負担軽減のため、全国で受け入れていただく。そうした依頼を国交省を通じて行っている」と話していた。米軍の拠点を全国に増やすわけだ。それで沖縄の負担が減るならいいが、辺野古移設は計画通り進めるのだから、支離滅裂だ。