政府は2015年度から自衛隊に導入する新型輸送機オスプレイを佐賀空港(佐賀市)に配備する方針を決め、佐賀県に正式に要請した。
併せて、沖縄県・米軍普天間飛行場の米海兵隊のオスプレイが暫定的に同空港を利用する可能性も示している。いずれも地元の理解抜きのごり押しは許されない。
昨年決定した18年度までの中期防衛力整備計画はオスプレイ17機の調達を明記している。受け入れ態勢を整えた佐賀空港に順次配備し、長崎県佐世保市に配置する離島奪還作戦を担う新設部隊「水陸機動団」の輸送手段として一体的に運用するという。
だが、オスプレイは開発段階で事故が相次ぎ、安全性に対する懸念は根強い。政府の配備方針に佐賀県民からは怒りや不安の声が上がっている。
加えて、佐賀空港の建設前の1990年、佐賀県は地元漁協と交わした文書で、空港を自衛隊と共同使用しないと表明している。政府がそれを知らなかったとは思えない。
配備先として木更津(千葉県)や大村(長崎県)の両飛行場など既存の自衛隊施設が浮上していたとされる中、なぜ佐賀空港を選んだのか。日米が共同で使える基地を増やすとともに、全国的な「オスプレイ・アレルギー」を払拭(ふっしょく)する狙いがみてとれよう。
海兵隊オスプレイの暫定使用について、政府は沖縄の基地負担を軽減するためとしている。重い負担の軽減は急務だが、果たして軽減につながるのかどうか。
沖縄県民の根強い反対にもかかわらず、政府は普天間飛行場の辺野古移設を強引に進めている。暫定使用できるように佐賀空港を整備し、その後、辺野古が完成すれば再び沖縄に戻すとでもいうのだろうか。いまのところ、政府の説明はない。
唐突ともいえる今回の要請は、11月の沖縄県知事選をにらんでいよう。負担軽減を目に見える形で示し、出馬を表明した仲井真知事を後押しする狙いだ。米軍再編で負担が増える都道府県を対象にした新たな交付金制度の検討にも同じ意図がうかがえる。
中国をにらんだ島しょ防衛力の強化は、日中間の緊張をさらに高めかねないとの見方もある。政府は佐賀県と協議を進めていくが、県民はむろん、国民に向けて丁寧に説明しなければならない。拙速は禁物だ。
2014年07月25日 高知のニュース